横顔

突然だが、私は人と目を合わせるのがものすごく苦手だ。いや、苦手というのもまた少し違うかもしれない。意識して相手の目を見よう、と思わない限り会話中だろうと何だろうと、相手ではなくどこかぼんやり違うところを見てしまう。もっとも、ちゃんと相手の話は聞いてるが、相手の立場からすればちゃんと自分の話を聞いてるのか不安になるだろうな、というごく当たり前のことにようやく最近気付いたのだが。今は自分で気付いた時にはなるべく意識して相手の目を見るようにしているので温かく見守って欲しい。

 

さて、今日私が少し話したいのは、相手の目を見るのが苦手な私だからこそ好きになった、横顔について。

私の言う「横顔が好き」というのは、世の女子高生なんかが「好きな男の子の体の部位」に「血管が少し浮き出た腕」とか答えちゃうような、その感覚と近い。

どうして横顔が好きかというと、相手の視界に入ることなく、相手を眺めることができるからである。特にその相手が好きな人であれば尚更だ。

 

「視界に入らないのがいいなら後ろ姿もいいのでは?」

ダメです。大事なことなので2回言います。ダメです!!

確かに後ろ姿なら確実に相手の視界に入ることはないです。けれど、それだと相手の表情、視線の先にあるものが全くわからないじゃないですか。それだと意味がないんです。

そうなんです。純粋に横顔のフェイスラインを見るのが好き、っていう理由もあるけど、それ以上に私が横顔を支持している理由は、「相手の表情」「相手の視線の先」を「相手の視界に入ることなく」そっと見ることができるからなんです。

 

目線を合わせるのが苦手な私は小さい頃からかなりの恥ずかしがり屋で、今もそうだ。恥ずかしがり屋であることを悟られるのも恥ずかしいから、塩対応したり顔に出さないようにしたり素直な反応ができないとか日常茶飯事なんですね実は。本当にコミュニケーションを取るのが不器用だな、と自分でもつくづく思うわけだけども。

とまぁ、こんな感じで恥ずかしがり屋な私は人と真正面で対面すると、どうしても緊張しちゃって、特に対面してる相手が好きな人だと、当然相手も私のことを真正面から見てることになるでしょ?もうそんな大それたこと、私が平然としていられるわけがないんです。自分にそのつもりがなくとも、対面している間は相手の視界を自分が独占しているんです。視覚で捉えられた挙動がダイレクトに相手に伝わる、というのは嬉しいことでもあるし少し怖いことでもあるんです。自分は自分の表情の微々たる変化を確認することはできないけど、相手にはそれが全て分かってしまう。自分ですら気付いていないような、ふと漏れ出してしまった本当の感情だったりが、真正面にいる相手にだけは伝わってしまうこと。自分の手を離れてしまった感情ほど扱うことが難しいんです。どうしてもまだ隠しておきたい感情ほど、自分の意識下から流れて、ふと顔を覗かせようとする。それが分かっているんです。

 

だから、私はずるいから、一方的に、静かに覗くように、横顔を眺めるんです。相手がこちらを見ていないから、自分の表情や振る舞いに気を回す必要がないんです。小さな瞬き、じっと一点を見るような強い眼差しだったり、ふわふわとどことも定まらず、気まぐれに視線を変えてる様子だったり、眠そうに頬杖をついていたり。どことなく疲れているような表情だったり、気の抜けてるような表情、何かいいことがあったんだろうな、って分かるような明るい表情。一つ一つ、相手の世界を邪魔しないように見るんです。そして、相手がこの瞬間、何を考えているんだろうな、と考えを巡らせることがたまらなく好きです。

 

あなたの視界の中に私が入ってない時、どんな風にこの世界を生きているのか。それを垣間見れるから横顔が好きです。

 

ただ、いつまでも私が横顔ばかり眺めるのは不公平だと思うから。最初は横に並んで歩いて、会話の途切れたふとした瞬間に私があなたの横顔をちらり、と見ることの繰り返しから、時間をかけていき、真正面からあなたの世界の中に入りこんでみたい。その時には、私の感情も表情も、恥ずかしがらず全て見せられるようになって、あなたも私の世界の中に入り込んできてほしい。

 

そんなことを思う冬の夜です。