【創作】心臓を貫かれた話①

まずはじめに注意書きを。この記事は前3つとは異なり、完全に創作となります。そこまで長くない文章ですが、何回かに分けて更新します。元ネタはツイッターの@mth_blackのアカウントでちょこちょこやっているタグ、 #ふぁぼした方が本だとしたら最初の1行には何と書いてあるか考える にて書いた、とある人の話。

最初の一行といわず、短い作品として書き上げたいな、と思ったのでこちらで書きます。

 

 

『心臓を貫かれた話①』

じんわり、一生をかけて身体中を蝕む毒を「飼って」いる。何もこれは好きでそうしているわけではない。気付いた時には目に見えない矢で心臓のあたりを貫かれており、抜くにも抜けないのだ。この毒に心当たりがあるとすれば、女子高校生だったあの頃だ。

 

大学に入ってからというものの、サークルや他大に通う友達から聞く"恋話"は、最早恋と呼べるものなのか甚だ疑問に思うような、口に出すことも、耳に入ってしまうことも憚れるほど汚らわしく、嫌悪感を抱く行為の晒し合いへと変わっていた。彼らの言う"恋愛"が悪いことではなくむしろごく普通のことだというのは、頭の中では理解しているし、人の数だけ恋愛の形があるのも知った。ただ、それが自分の価値観とは相反するというだけの話だった。何故かは分からないが、性を全面に押し出すこと、積極的になることは悪だ、恥じるべきことだ、……といったような認識が刷り込まれていることに気付かされたのだ。私はこの認識が特段おかしいとは思ってこなかった。けれど、自分が少数派であることを思い知らされるたびに、自分の価値観は異常なのではないか、と不安に駆られ、また、その汚らわしさの克服・受容は、きっと避けられない課題であると悟りもするのだ。

 

だからこそ、いつまでたっても私は高校生だったあの頃を、何度も何度も頭の中で繰り返し辿って、その度に心臓を貫く矢の存在を思い出す。そして、心臓が鼓動を打つ度に、じわりじわり、と矢の刺さっているところから毒が滲み出るのだ。一度に滲み出る量は微量だが、吸収されることも分解されることも排出されることもなく、確実に私の身体中を巡り、蓄積されてゆく。私の飼っている毒は、タチの悪い遅効性の毒で、持続性は数時間から数日。完治することは困難であり、有効な治療法もまだ手探り状態という、厄介なものだ。

けれど、この毒こそが私の初恋であり、結果であり、決して私の中から消し去りたくないものでもある。

 

 

高校生。誰も気にも留めないような些細な一瞬に全力で喜び、本気で落胆し、五感で人を好きになる。初々しさと大人への背伸びが入り混じる、二度と過ごすことの出来ない3年間である。指定された制服を着て、自分のクラスの教室で皆が同じ授業を受ける。あの恐ろしく閉鎖的で規則がいくつも存在する環境こそが、混ざりけの無い好きの気持ちが育つ土壌であると、高校を卒業してから気付いた。

廊下ですれ違う瞬間、教室の窓からグラウンドを眺める瞬間、他のクラスに遊びに行く瞬間、登下校のタイミングが同じだった瞬間。

どれも日常の一部であり、ありふれた場面だ。けれど、そんな変哲のない毎日でも私たちは感情を強く揺さぶられ、必死に平静を装いつつ、密かに強く、相手を想っていた。誰しもそんな時期が確実にあったという事実が耽美的に感じる。

当時の私も、例に漏れず誰にも言えない片思いをした。思えばこれが初恋だった。